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メディアワークス文庫『時槻風乃と黒い童話の夜 1』

甲田学人先生の現代ファンタジー。

童話をモチーフにした、少女の痛みのお話。
イラストは一切ないのに心も体も痛い、いつものアレです。

世界に聡く、視野の狭い少女たちが時槻風乃さんと出会う話。

風乃さんとは『断章のグリム』のあの風乃さんですが、
生前の風乃さんであって、まだちゃんと人間です。

『Missing』に対する『夜魔』みたいのを予見していましたが、違いました。
風乃さんは魔人でも魔女でもなくて、本当にただの少女です。

お話も童話になぞらえることで『断章のグリム』っぽさはありますが、
泡禍では無く、単なる負の感情が原因のただの事件です。

超常現象が絡まない事で、突然のびっくりホラーでは無いモノの、
じわじわ這い寄る現実的な恐怖に襲われるというか。

後味の悪さはグリム並と言えますけどね。
胸と頭と心が重くなることは請け合います。

●シンデレラ
姉を優先する母と折り合いの付かない内気な妹さんのお話。

優秀な兄姉と比べられてのコンプレックスは良くあるモチーフではありますが、
駄目な兄姉と比べられて……という価値観に、初っ端から頭をガツンと
やられた思いでした。

母親、先生、父親と、大人という外への窓口が一つ一つ閉じた時の絶望感。
これがもう半端ないです。甲田学人作品、読んでるなぁって気になります。
逆に一つでも残っている時の、頼り甲斐って点でもすごいんですけどね。

この渦巻く絶望感を、ただの通りすがりのゴスロリ少女、時槻風乃は
何とも無しに惹きつけて見守るだけ。
そして同じく通りすがりの大学生は首を突っ込みたがるが、何も出来ない。
これがこの黒い現代童話のテンプレートという事で。

●ヘンゼルとグレーテル
妹を守る兄と、兄を守る妹と、兄妹を守るお祖母さんのお話。

このシリーズのもう一人の主人公、森野さんの原点たるお話。
このシリーズは「痛みを持つ少女」視点のお話なのですが、
この話は兄の話と妹の話の2編構成となっていて、特殊なお話。

大部分が何も知らない兄の話、妹ちゃんのお話はほぼ事後のネタばらしなので、
いつもの断章のグリムと言ってもいいかもしれないです。
近しいけれど、断絶している寂しさ虚しさ、そして怖さが底知れません。

どこかで気づいていれば、というお兄さんですが、かなり難しいですよね……。
あまりにも自然すぎて、その悪意にも、期待にも気付ける気がしません。
分かってしまえば、筋が通っているかと納得できなくもないんですが。

●金の卵をうむめんどり
亡くなった母親を守る少女のお話。

シンデレラは最も残酷で、ヘンゼルとグレーテルは最も狂っていて、
そして金の卵をうむめんどりは、この巻の中で最も痛かったです。
途中で投げそうでした。本当にキツかった……。

これまた話の類型としては特殊で、森野さんのターンが無く、
風乃さんのターンがあります。というか半分くらい風乃さんのお話。

今までは風乃さんが悩みを聞いて返すことで事件が起きていましたが、
この巻では風乃さんこそが悩み、事件の当事者さんは既に結論出した後なので。

他のお話では事件が起きてしまったら、それで終了だったのですが、
この話では事件を起こし続ける展開なので、良心と凶行とのギャップが
辛いのなんの……。

それを見守る風乃さんの優しさが、『断章』とは違うなぁ、と
改めて思いました。
逆にこのシリーズ読んだ後に『断章』読んだら、風乃さんの優しさが
ちゃんと見えてくるかもしれませんね。

それでは、また。


関連

断章のグリム 17

ノロワレ 2

夜魔 -怪-

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