« 電撃文庫『アカイロ/ロマンス 2』 | トップページ | 電撃文庫MAGAZINE Vol.5 »

講談社『ファミリーポートレイト』

桜庭一樹さんの新刊。

 ママの名前は、マコ。
 マコの娘は、コマコ。

この書き出しにいたく魅かれたんですが、何故だろう。

「直木賞受賞後初の書き下ろし」とか、どうでもいいよ…。
なんて思っていた時期が、私にもありました。

この煽りにあんな意味が在ったとは…。

不器用な母親と、輪をかけて不器用な娘の逃避行から、
娘が成長していって、幸せになる? 愛を探すお話。

その辺の女の子と女の人な部分は、
『砂糖菓子』などのいわゆる地方都市シリーズと、
某受賞作『私の男』という、二つを足した感じです。
1:3くらいの混ぜ率でしょうけど、集大成というのは間違いではないかも。

ただ、間違っても『GOSICK』の色は出てないので、
そこからの流入は注意、という事で。

それと「作家」というイキモノのお話。
作家というか、創作家と意味を広げても良いんでしょうけど。
某“文学少女”よりも毒々しく、悲惨に書いてますが。これ良いのか。

前半がママを追いかける少女、
後半がママに取り憑かれた女の人のお話ですな。

前半は逃避行。
ある街で一時を過ごしては、見つかり逃げて、他の街へ、
という短編チックな展開。

山奥の閉じた街、海辺の温泉宿、新興の工場町、動物園の街、隠遁者の家。
子供視点だからなのか、やたらと象徴的な街ばかり。

この退廃的なワンダーランドは、実に地方都市シリーズの臭い。

コマコは旅人で、在住者ではないので視点は違いますが、
海辺の街の女学生なんか、もうそのままでしたね。
そして最期が実に鬱い。

山奥のアレは意味があったのか? というくらい唐突だったですし。

後の工場街とか動物園でのお話もそうですけど、
コマコの幻視幻聴の意味が良く分からない。
やっぱ文芸書なのだし、怖い比喩だったりするのかもしれないけど、さっぱりです。
これは、もう畑違いと言うしか無い。

そしてこのパートのもう一つのテーマが、親子の呪いというやつで。

親の求める物にならねばならない子供。
親に求められねばならない子供ですね。
これも黒桜庭ではよくある、アレ。

ついでに女性という性を書き出して、滅茶苦茶やっております。
あ、でも今までと違って女親と女の子のお話ですけど。

これも実に鬱い。
この物語はフィクションです。 ……よね? という感じです。

子供の精神成長ってのは、天気予報と同じで、
結果から要因を類推する事は出来るかもしれないけれど、
逆は不可能、せいぜい明日まで。と信じてはいるのですけども、
なんだか侵食されそう。

後半は学生時代と大人になってから。

学生時代は、女性性の話。
先の親子の呪いと同じで、その理屈は分からなくもないが、
賛成は出来ないという感じ。鬱いので。

大人になってから、というのがつまり、作家の話。
で、ここに来ると、どうしようもなく気になるのが、
えー、これって自伝なのかい!? という事。

いや、フィクションです、は分かっているんですけども。
ここまで意識的にやられれば、重ねざるを得まい。

件のあの煽り。そのものじゃないですか。
それに気付いたら、感想が「よく出版したなぁ」になってしまう訳ですが。
これには素直にやられた、と思いました。

つーか、これ、ホントに『GOSICK』のあとがき読んでなかったら、
作家性疑うんじゃないかな。

しかし『私の男』よりはよっぽど読めましたが、文芸書ってのは難しいなぁ。

それでは、また。


関連

推定少女

荒野

私の男

|

« 電撃文庫『アカイロ/ロマンス 2』 | トップページ | 電撃文庫MAGAZINE Vol.5 »

10_その他」カテゴリの記事

アニメ・コミック」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/222518/43474877

この記事へのトラックバック一覧です: 講談社『ファミリーポートレイト』:

» 「ファミリー・ポートレート」ページは増量、物語の深みは感じら... [soramove]
「ファミリー・ポートレート」★★★凡作 桜庭一樹著、517ページ、1785円 手に持った時の厚みがいい、 まだ中を全く見て無いが、 その重さの分だけ期待させてくれる。 ひとりの少女とその母の物語だ。 出だしは次に何が起こるか、 少女は何を感じているのか、 物語りに引き込まれ 読み進めた。 ところが、 母親と離れてからは 別の物語のようになってしまい、 勢いというか、 スピード感はあるけど、 すべて軽薄な印象で 話にノレなかった。 主人公が... [続きを読む]

受信: 2008年12月26日 (金) 20時34分

» ファミリーポートレイト 桜庭一樹 [粋な提案]
装画はMASAKO。ブックデザインは鈴木成一デザイン室。書き下ろし。 五歳の駒子は母、真子と逃避行。老人の村、海辺の町、豚の世界、動... [続きを読む]

受信: 2009年1月 7日 (水) 03時17分

« 電撃文庫『アカイロ/ロマンス 2』 | トップページ | 電撃文庫MAGAZINE Vol.5 »