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新風舎『ちーちゃんは悠久の向こう』

あの日日日さんの、あの作品。

ジャンルは…学園ラブロマンス?
まぁ、それでは絶対にありえませんが。

これは…これはかなり、ヤバい…!
読みたい人は読むべきだ。
迷う必要はないですな。

なので、以下、ネタバレ含みという事で。

私はこの作品について、とある人からこういう評価を聞きました。
曰く「普通に泣ける」

あ、そういう作品なんだ。
という事は日日日さん、つまりは様々な作品が書けるから、それで評価されたのか。
これは期待せざるを得ない。

その評価を聞いた時は、私、そんな感想を持って、
いつか読んでみよう、そう考えたのです。

しばらくして、角川スニーカーでの日日日作品
『アンダカの怪造学』を読んだのです。
要するに、「面白い、が、オリジナルではない」そんな感想で、
それは今までの日日日イメージをさらに印象付けたのでした。

この作品、260ページほどですが、
その最初の20ページほど読んで思いました。

うわ~、これは当たりだ。
きっと読書感想文にいろんな事を書ける作品だ。
ヤバイ匂いがプンプンだ。
でも、あれだなぁ、こんな設定というか構成、どこかで読んだような…。

多分、読書感想文での最後の文句は
「面白い、が、オリジナルではない」
また、そんな感じで締めるんだろうな。

…とんでもないですよ!
そんなもんじゃない! そんなもんじゃなかったのです!

最初の20ページ、この辺りで私は分析を始めたわけです。
この作品、何に似てるのだろう。
…あれか?『猫の地球儀』、つまりは秋山節に似てるって事か。
この伏線の張り方はどう考えても、崩壊の足音だもの。

でも、なんか違うなぁ。しっくり来ない。

…で、読み進めて全体の半分、
起承転結の「転」にあたる怪奇事件の辺り。
意外と早く、ここで崩壊、しましたね。

このときにポカ~ンとして思考停止に陥った私は、
読み進める前に、また分析。

そう、この崩壊こそ秋山節。
でも違う。
崩壊するほかの作品…なんだ?

…あっ!あれだ!乙一の『GOTH』
そうか、相方だけが崩壊するんじゃない。
この主人公が最初っから壊れっぱなしだったって事、
それが乙一作品に似てるんだ。

それから、続きを読み始め、
終わりが見え始めてくる200ページを越えた辺り。
林田さんのエピソードが終わりを迎え、最終局面のちょい手前。
唐突に思いついたのです。
何に似てるか、その作品が。

分かった。

…西尾維新だ。…『戯言』シリーズだよ。
壊れている事は決定済みで、中盤辺りで明かしているにも拘わらず、
それでも、続いていく物語。
完全に最終局面がバッドなエンドであると読者は知っていても
それでも続く物語に希望を抱いて、やっぱりそれが崩される。
そんな絶望的な話の展開。

それだ。

それで、最後の最後、ここで日日日、やってくれました。

秋山瑞人なら「なくなるものはなくなる。でも待って?
もうちょっと探してみたらあるかも知れないよ?」

乙一なら「なくなった?何がなくなったって言うの?
最初からなんにもなかったじゃない」

そして西尾維新なら「予定通りに何もなくなりましたよ。
おや?君たち何を期待していたんだい?」

と各々そう言うだろうところで、この日日日は

「何もなくなって、それで終わりと思ったんでしょ。
その程度、こっちは予想済みだね。そうはいくか」

と、そう言ったのです。

こいつの頭はオカシイ。
こんな作品書いたら、そりゃ大賞くらい取りますよ。
そう、思った。

日日日の面白さは、ライトノベル世代には新鮮であろう凝った日本語。
18歳でこういう文章が出てくるなんて、とんだ原石があったものです。
読んでて、こんな表現使うんだ、と何度となく感じました。
むしろ、今の中高生には分からない表現じゃないでしょうか。

そしてライトノベル世代にクリティカルな話をする所。
上で書いた、売れ筋の作品を連想させる。
つまり、これを初めて読んだやつは心酔する筈だという所。

ここまでが、途中で気が付いた部分。読んでるときに感じた勢い。

最後まで読み終わって、読後感に浸りながら、気が付いた所。
それが、この作品全体の雰囲気。

この作品、絶対に鬱屈した中高生には読ませちゃいけません。
こんなのに共感されたら、困る。
それなのに、奴らには絶対に共感される、そんな雰囲気がある。
これを、不安定な輩が読んだら、
それこそ悠久の向こうに行くんじゃないか。

そんなリアリティがこの作品にはある。
そのリアリティを感じさせる表現が、構成が、この作品。
今、私が一番、日日日を評価するのは、そこ。

これを評価し、大賞をあげた誰かさんは、
違うところ、つまりは潜在的な筆力に着眼したのかもしれない。
というか、むしろ、日本語の技巧とかそんな所こそ、
そして、この若さこそ、評価されるべきかもしれない。

その辺り、技術的な話は解説で久美沙織さんが書いていて、
それを読んで、ものすごく納得できた。
さすが久美沙織さんだと思うくらいに、納得できた。
感じた部分を言葉で補完する、良い解説文を読めました。

でも、私が恐れ入ったのは、
この現実と虚構が区別できなくなりそうな雰囲気。
これは、私にとってのツボであり、
ただのシチュエーションに感心しているだけ、作品を評価しているだけであって、
日日日を評価しているのではないのです。

だから、日日日の作品全てに心酔はしていません。
次回作でも同じ感動を与えてくれると期待している訳じゃないです。

でも、「日日日」、要注意人物に認定しました。

もう、胸いっぱい。

それでは、また。

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